冷酷王の深愛~かりそめ王妃は甘く囚われて~
「シャラガ殿がそう言うのでしたら……」
従者は、しぶしぶ剣を収めた。それでようやく、ミルザは小さく息を吐いた。そんな様子を苦々しく見た従者は、さらに言葉を重ねる。
「だが、我々を手間取らせたこの者たちには、厳正な処分をいただきますよう」
「もちろんです。だがそれはこちらに任せていただきましょう。よいですね」
ぐ、と従者が言葉に詰まる。言葉は丁寧だが、その青年の持つ迫力におされ、従者はそれ以上の言葉をのみ込んだ。
場が収まるのを待って、今度は青年のうしろにいた若い近衛兵が声を張った。
「ナトリア国外務大臣、クーバ・ドルズ殿。レギストリア王国へようこそ。国王シャラガをはじめ、わが国民すべて、心より貴殿を歓迎いたします」
ミルザたちの様子を息をつめて見ていた民衆たちは、その声で、ほっとしたようにそれぞれに散っていった。
「ミルザ……」
気の抜けたようなサーザの声に、ミルザが笑みを返そうとしたときだった。
「シャラガ殿」
ふいに馬車の中から声がした。
するりと馬車の窓が開いて、そこからでっぷりと太って脂ぎった中年の男が顔を出す。
「その者たちに罰を加えるというなら、どうです。酌のひとつでもさせてみては。その娘たち、なかなかよい器量をしているではありませんか」
ねばりつくような視線を受けて、ミルザの背に冷たいものが走る。
しばらく黙っていた青年は、うしろに控えていた近衛兵に向けておもむろに口を開いた。
「連れていけ」
振り向いて顔を上げたミルザは、再びその青年と目を合わせた。
レギストリア王国、第八代目国王、ザジール・シャラガ・ド・レギストリア。二十六歳の若い王は、ミルザを鋭い目で射ぬいた。
そうしてつかの間ミルザを見つめると、国王は馬をひるがえして彼女に背を向けた。
従者は、しぶしぶ剣を収めた。それでようやく、ミルザは小さく息を吐いた。そんな様子を苦々しく見た従者は、さらに言葉を重ねる。
「だが、我々を手間取らせたこの者たちには、厳正な処分をいただきますよう」
「もちろんです。だがそれはこちらに任せていただきましょう。よいですね」
ぐ、と従者が言葉に詰まる。言葉は丁寧だが、その青年の持つ迫力におされ、従者はそれ以上の言葉をのみ込んだ。
場が収まるのを待って、今度は青年のうしろにいた若い近衛兵が声を張った。
「ナトリア国外務大臣、クーバ・ドルズ殿。レギストリア王国へようこそ。国王シャラガをはじめ、わが国民すべて、心より貴殿を歓迎いたします」
ミルザたちの様子を息をつめて見ていた民衆たちは、その声で、ほっとしたようにそれぞれに散っていった。
「ミルザ……」
気の抜けたようなサーザの声に、ミルザが笑みを返そうとしたときだった。
「シャラガ殿」
ふいに馬車の中から声がした。
するりと馬車の窓が開いて、そこからでっぷりと太って脂ぎった中年の男が顔を出す。
「その者たちに罰を加えるというなら、どうです。酌のひとつでもさせてみては。その娘たち、なかなかよい器量をしているではありませんか」
ねばりつくような視線を受けて、ミルザの背に冷たいものが走る。
しばらく黙っていた青年は、うしろに控えていた近衛兵に向けておもむろに口を開いた。
「連れていけ」
振り向いて顔を上げたミルザは、再びその青年と目を合わせた。
レギストリア王国、第八代目国王、ザジール・シャラガ・ド・レギストリア。二十六歳の若い王は、ミルザを鋭い目で射ぬいた。
そうしてつかの間ミルザを見つめると、国王は馬をひるがえして彼女に背を向けた。