王太子の揺るぎなき独占愛
「一人前の王妃殿下になんて、いつなれるかわからないよ」
ただでさえ王妃になることへの不安でいっぱいだというのに、カーラのあっけらかんとした言葉に、力が抜けてしまった。
サヤは、どっと疲れを感じ、刺繍の練習に集中するからと言って、自分の部屋に戻った。
刺繍をしようと針を手にしても、なかなか集中できず何度も針を指に刺した。
痛みを覚えながらも頑張ろうとするが、気持ちがなかなかのってこない。
「あー、もう、やだ」
サヤは部屋の脇の小机に布を放り出し、ベッドに飛び込んだ。
子どもの頃から使っているベッドは、ダスティン手作りの頑丈なものだ。
お気に入りの布団はほどよい柔らかさで寝心地もいい。
嫁ぐ際には王城に持ち込みたいのだが、その話を切り出す前に、レオンはふたりで使うベッドを既に注文し作らせていた。
ウェディングドレスにしても、サヤの希望を取り入れつつも、結局はレオンが細部にまで自分の好みを主張したものに決まった。
レースやパールがふんだんに使われ、バックリボンがとてもかわいいドレスだ。
華美なドレスは自分には似合わないのに……。
これまで舞踏会にも参加することがほとんどなく、ドレスを着る機会などなかったに等しいサヤは、ドレスの出来上がりが楽しみでもあり、不安でもある。
いざウェディングドレスを着ても、似合わなかったときにはどうすればいいのだろうかと、鬱々としている。