王太子の揺るぎなき独占愛
「それでね、あれだけ充実している作業部屋だから、サヤに全部譲ったのよ。まあ、サヤは刺繍も編み物も苦手だって言って最初は全力で拒んでたけど。押し切っちゃったわ」
ふふっと笑うジュリアにつられ、レオンも笑った。
「今日、早速ジークが作業部屋にサヤを案内してくれてね。あまりの材料の量に驚いていたらしいけど、王妃には刺繍をしなきゃならないときがいくつかあるし、頑張ってもらわなきゃね」
「は? 今日、作業部屋に案内したのか?」
突然、レオンの低い声が部屋に響き、ジュリアだけでなく侍女も視線をレオンに向けた。
「おい、今日サヤが作業部屋に行ったのはたしかか?」
足元のドレスをよけながら、レオンがジュリアに近づき、腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっとお兄様どうしたのよ、痛いわよ」
ジュリアは掴まれた腕が痛くて顔をしかめるが、それに構わずレオンは言葉を続けた。
「サヤが作業部屋に行ったのは何時頃だ? おい、たしかに行ったんだろうな?」
「あ、あのねえ。なんなのよもう……。そうね、二時ごろだったかしら。ジークが案内したあと、しばらく作業部屋にいて、そのまま帰ったらしいわよ。それがどうかしたの?」
ジュリアはレオンの顔が強張っているのに気づき、眉を寄せた。
「サヤが作業部屋に行ったらまずいことでもあるの?」
「いや、別に……」
掴んでいたジュリアの腕を離すと、レオンは視線を泳がせた。