王太子の揺るぎなき独占愛



「ふーん。なにかあるんだ。作業部屋にサヤに知られたらまずいものでもあるの?」
「いや、違う」

 慌てて否定するレオンに、ジュリアは詰め寄り、居心地が悪そうに揺れるレオンの瞳をじっと見た。

「私がお兄様の妹を何年やっていると思うの? そうやって目を泳がせているときはいつも嘘をついてるんだから」
「ち、ちがう、嘘じゃない」

 焦るレオンに、ジュリアはさらに詰め寄った。

「お兄様が泣いても悲しんでも構わないけど、サヤを苦しめることは許さないわよ」
「お、おい。離れろよ」

 ジュリアは後ずさるレオンを追い詰めるように、にじり寄った。

「サヤに、ステファノ王子も大好物の洋ナシのパイの作り方を教えてもらうんだから、サヤを傷つけて婚約破棄なんてされないようにしてよね」
「は? 婚約破棄? そんなことさせるわけないだろ」

 ジュリアの言葉に、レオンも思わず大声で答えた。

「サヤは俺の妃になると決まってるんだ。婚約破棄なんてあるわけないだろ?」
「わからないわよ。ステファノ王子が言ってたけど、サヤに結婚を申し込もうとしていた男性が周辺国に何人もいたらしいから、今からでも遅くないわ。王家に嫁いでも大変だもの。サヤだって王家の森にいる方が幸せに決まってるわよ」
「それは俺が一番わかってるさ。王妃になっても窮屈なことばかりだからな。だけど、これでもかってほど大切にして、とことん愛して、森にいる以上に幸せにするから黙ってろ」

 滅多に怒ることのないレオンの激しい声に、侍女は後ずさるほど驚いた。

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