王太子の揺るぎなき独占愛



 感情を露わに見せない淡々とした王太子。
 何をほしがるわけでもなく王太子としての義務をまっとうする真面目な王子。

 整った見た目と騎士団で鍛えた立派な体は女性からの人気も高いが、冷たい印象を持たれるレオンが女性に熱い思いを持つとは思えなかった。
 しかし、サヤのこととなるとここまで熱くなるのだ。
 侍女はまるで初めて会ったひとを見るように、レオンに視線を向けた。

「ふうん。だったらどうしてそんなに慌てるの? サヤと作業部屋にどんな関係があるのよ。内容次第じゃ私がサヤの面倒を見るわよ。イザベラと一緒にサヤもラスペードに連れて行くからね」
「は? もとはといえば、お前がイザベラをラスペードに連れて行くって言い出したからだろう? サヤも連れて行くだと? 勝手なことばかり言うな」

 レオンの激しい声が再び部屋に響いた。

「イザベラを説得するために、俺がどれだけ根回しをして苦労したと思ってるんだよ。おまけに作業部屋にサヤが……。これでサヤが傷ついて泣いてたらどうするんだよ」

 レオンは苦しそうにつぶやくと、両手を膝に置いてうなだれた。
 王太子として毅然とした態度で公務にあたる普段の姿からは想像できないレオンの様子に、侍女は驚き言葉を失った。
 どうしていいかわからずジュリアを見れば、ジュリアは何でもないとでもいうように笑い、うなずいた。

「遅くまでご苦労様。突然片づけを手伝わせてごめんなさいね。続きは明日ってことで、またよろしくね」

 侍女はジュリアの言葉にホッとしたように息を吐くと、「では失礼いたします」と言うなりいそいそと部屋を出て行った。

 レオンの様子によっぽど驚いたようだ。

 ジュリアはドアが閉まるのをたしかめたあと、うなだれたままのレオンの側に立った。

「さ、事実をありのまま言ってもらいましょうか?」
 

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