王太子の揺るぎなき独占愛



 その日から数日間、レオンはサヤが誤解していないかと気が気ではなかった。

 直接会ってサヤと話したいと思うのだが、忙しすぎて会いに行く時間を取れずにいた。

 イザベラとは誤解されるような関係ではないのだが、もしもあのとき、作業部屋の奥にサヤがいたとすれば、誤解されても仕方がない。
 イザベラに抱きつかれ、そのままにさせていたことを思い出し、頭を抱えた。
 もしもサヤが悩んでいるとすれば、すぐにでも事情を説明し、安心させてやりたいが、状況がそれを許してくれそうもない。

 ここにきて、ジュリアの結婚を妨害するような動きがあるのだ。

 ファウル王国とラスペード王国の国境沿いに発見された鉱脈を狙う集団がいるのは事前に確認していたが、明け方近くに採掘場の事務所に忍び込み、ボヤ騒ぎを起こした。
 作業員たちは事務所近くの簡易宿舎で休んでいたが、たまたま早く目が覚めた作業員のひとりが事務所に行ったところ、ボヤに気づいた。
 採掘場には防火用の貯水槽を用意しなければならないという規則があり、作業員は貯水槽からバケツで水をくみ出し、慌てて火を消した。
 事務所内に置かれていた書類の一部が焼けただけで済んだが、消化を優先したこともあり犯人には逃げられてしまった。

 その日以降、採掘場周辺の警備を強化し二十四時間体制で周辺を監視している。

 今回はボヤで済んでよかったが、いつまた騒ぎが起こるかもしれない。
 両国の騎士団を現場に派遣し、細心の注意を払っている。
 犯人がまだ捕まっていない今、それは当然のことなのだが、いつまで続くのかわからないこの状況に、レオンや騎士団はじりじりとした日々を過ごしている。

 そんな中、王妃教育で毎日王城を訪れているサヤと昼食をともにできる時間をようやく確保できた。
 朝から続いてた即位に向けての諸侯たちとの会議を終え、レオンはそわそわする気持ちを抑えながらサヤの待つ部屋に向かった。


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