王太子の揺るぎなき独占愛
  


 サヤとジュリアは、侍女たちと一緒に連日届けられる大量の品を整理しているのだが、午前中から始めてすでに夕方近くだというのに、終わりが見えずにいた。

 ラスペードに持ち込むものがあればあらかじめ運んでおくのだが、ジュリアはとくになにもいらないと言ってはサヤに譲ろうとする。

 サヤはそのたび全力で断るが、時間がたつにつれ、サヤに手渡されるものは増えるばかりだ。

「これもいらないわね。縁起がいいのかもしれないけど、どくろを巻いたへびの彫刻なんて、誰が喜ぶのかしら。センスがないわよね」

 呆れた声をあげるジュリアに、サヤは慌てた。

「あの、この置物は西のシャルーン王国から届けられたもので、かの国では幸福の象徴とされているニシキヘビの彫刻です。それほど大きくありませんので、ラスペードにお持ちになった方が……」
「無理。私、虫だけでなくヘビも苦手なの。絶対に置いていくから、あとはサヤに任せる。この城の女主人になるんだから、これだけでなく、ここに積まれているものは全部サヤが好きにしていいし」

 ジュリアはあっさりとそう言い放つと、ヘビの彫刻だけでなく、部屋中に溢れている品々を指さした。


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