王太子の揺るぎなき独占愛
「私、物を増やすのが嫌いなの。必要なものがあればステファノ王子が用意してくれるから、なにもいらない」
この話はこれで終わりだとばかりに、ジュリアは強い口調で言い切ると、傍らのテーブルに用意されている紅茶を手に取った。
そして、朝から続く作業で疲れた体をソファに沈め、ふうっと息を吐き出した。
「お疲れですよね。ジークさんにお願いして、なにか口に入れるものでも持ってきてもらいましょうか?」
サヤの問いかけに、ジュリアは首を横に振った。
「ううん。いらない。このところお祝いの宴が続いてるでしょう? ついついおいしいものを食べすぎちゃって、太ったかもしれないのよね。このままだとお気に入りのウェディングドレスが着られなくなりそうだもの。我慢我慢」
冗談めかして話すジュリアに、サヤはくすりと笑った。
「もともと痩せていらっしゃるので、多少食べたほうがいっそうキレイになると思いますけど」
「ふふ。ステファノ王子と同じことを言うのね。だけど、こう毎日祝宴が続くとそうも言ってられないわ。昨日もハンクご自慢のモンブランをいくつも食べちゃったし」
「私もひとついただきました。あまりにもおいしかったので、こっそりと部屋に持って帰って殿下にも食べていただいたんです」
「お兄様、ああ見えて甘いものがお好きだから喜んだでしょう?」
「はい、とても」
サヤはレオンの様子を思い出し、にっこり笑った。
甘いものに目がないレオンは、宴で振る舞われたモンブランを気にしていたのだが、王太子が甘いものを食する姿を見せることに躊躇し、あきらめたのだ。
レオンがときおりモンブランに視線を向けているのに気づいたサヤは、モンブランだけでなく、シュークリームやタルトなどを皿に盛り、こっそりと部屋に持ち帰った。
それを見たレオンの喜びようはかなりのもので。
『俺の妃は最高だな』
そう言ってサヤを抱きしめ、あっという間にすべて平らげていた。