王太子の揺るぎなき独占愛
レオンはサヤの言葉に目を開き、右手で口元を隠した。
自分の思いを素直に伝えてくるサヤがかわいすぎて、顔に力が入らない。
今夜サヤと別々のベッドで眠る自信は徐々に失われ、王家のしきたりなど破ってしまおうかと葛藤が続く。
自分たちは愛し合い、婚約もしている。
だったら、我慢などせず、とっととサヤを自分の部屋に移してもいいだろう。
「ジークさえ味方につければなんとかなるんだが……」
いずれ賢王になると言われているオトコの口から出たとは思えない言葉に、サヤは首をかしげた。
「ジークさんがどうかしましたか?」
「ん……?」
つぶらな瞳でレオンを見上げたサヤの言葉が、レオンの心をさらにあおり、レオンの心は決まった。
「サヤ、今夜はこのまま、俺の部屋で……」
覚悟を決めたレオンが思いを口にしたとき、バタンという大きな音とともに、勢いよくドアが開けられた。
「殿下、大変です」
「な、なんだ?」
レオンは素早くサヤの前に身を移して彼女をかばうと、胸元から短刀を取り出し身構えた。
突然部屋にび込んできたオトコは騎士のひとりで、レオンの前に片膝をつき、頭を下げた。
後に続き、息を切らしたジークも飛び込んできた。
「申し訳ありません。止める間もなく、この者がいきなり……」
ジークはその場に座り込み、浅い呼吸を繰り返す。
「……いったいなんだ? しばらく人払いを言い渡しているはずだが」
「申し訳ありません。緊急事態でございます。ラスペードとの国境沿いの採掘場に不審者が入り込み、作業員たちを人質にとって立てこもりました」
騎士の言葉に、レオンは激しく反応する。
「は? 人質だと?」
レオンは声を荒げた。