王太子の揺るぎなき独占愛




 ファウル王国には総勢千人を超える騎士がいるが、その中から五百人が採掘場に向かうこととなった。

 ラスペード王国からも同数の騎士が派遣され、あわせて一千人の騎士が現場に駆けつけた。

 国境沿いの山の中腹にある現場は、採掘のために周囲が整備され、物資の運搬も滞りなく行われている。

 現場事務所に立てこもった犯人は、鉱石を運搬する馬車の荷台に隠れて侵入したが、その姿を見た者たちは一様に「どこにでもいる農民にしか見えなかった」と口を揃えている。

 六交代制が敷かれている現場では、正午を合図に作業員が交代するのだが、現場を離れる者と仕事を始める者とが事務所で引き継ぎを行っているときに、爆弾を抱えた男性十人ほどがなだれ込んできた。

 作業員の多くは慌てて事務所を飛び出したのだが、逃げ遅れた者たちが人質としてとらえられてしまった。

 犯人たちはみな日に焼け、おどおどした様子で爆弾を抱えていた。
 作業員たちに爆弾を見せて脅すと、後ろ手に縛って部屋の片隅に座らせた。
 その様子は決して慣れたものではなく、戸惑いを顔に浮かべていた。

「……以上が事務所を飛び出した作業員たちの証言です。農民たちの仕業となると、背景に誰か面倒なやつらがいるかと思われますが」
「ああ。やっかいな状況だな。金目当ての慣れた奴なら引き際を見極めるだろうが、農民か……」

 レオンは怒りを含んだ声でつぶやき、顔をしかめた。

 半時間ほど前に現場に着いたレオンは、すでに用意されていたテントで状況報告を受けていた。

 現場である作業事務所からすぐの野営地には、休息をとる作業員たちのためにいくつものテントが用意されているの。
 その中でも一番広いテントに、レオンを始めファウル王国とラスペード王国の上級騎士たちが顔を揃えている。
 
 事務所が占拠されたと連絡を受け、ラスペード王国からは騎士団長を始め、五百人の騎士が隊を作りやってきたが、ファウル王国同様、優秀な騎士たちばかりで、冷静に事の成り行きを見守っている。



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