王太子の揺るぎなき独占愛




「なにかと面倒な公爵だとよく耳にするが、陛下も大変だな」
「はい。おまけにご息女を王太子殿下に嫁がせようと画策していたようですがうまくいかず、第二王子第三王子も婚約が調われてしまい」
「その怒りの矛先がジュリアとステファノ王子の結婚に向けられたということか?」

 レオンの呆れた声に、フェリックは体を小さくし、頭を下げた。

「申し訳ございません。ミリエッタ公爵が領民をつかってこのようなことを……」

 フェリックの謝罪の言葉に合わせ、彼の周囲に控えるラスペードの騎士たちも膝をつき、レオンに頭を下げた。

「なんて短絡的なオトコなんだ……。で、そのミリエッタ公爵が関係しているという証拠はあるのか?」

 ため息まじりに問うレオンに、フェリックは辺りを見回した。

 すると、騎士団たちの間から、ひとりの男が立ち上がった。
 まだ若く、鎧を身につけながらも細身の体を見れば騎士になって日が浅いのだろう。
 それでも、深く頭を下げたあとレオンに見せた表情は大人びていて、これまで苦労してきたのだろうと容易に察することができた。

「彼はシャリオと申しまして、入団してまだ一年です。それまで、家族とともに小麦を育てておりました」

 フェリックは自分の隣にシャリオをひざまずかせると、意味ありげに彼にうなずいた。

「なんだ? この男がどうかしたのか?」

 レオンの戸惑いに、シャリオは一瞬躊躇しながらも、はっきりとした声で答えた。

「レオン殿下、申し訳ありません。今あの事務所に立てこもっている犯人の中に、私の父がおります」
「……は? 父親が?」
「はい。このようなことになってしまい、申し訳ございません」

 シャリオは地に頭をつけ必死で謝り続けた。



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