王太子の揺るぎなき独占愛
シャリオは父親がしでかしたことの重大さにおののき、その背中は小刻みに震えている。
レオンはフェリックに視線を向け、どういうことだと問いかけた。
「農家に生まれたシャリオは、父親とともに小麦を育てていたのですが、騎士になりたいという夢を諦められず、家を捨てる覚悟で厳しい入団試験を受け入団したのです。その結果、働き手を失ったシャリオの実家は農業を廃業するしかなくなりました」
そこまで話すと、フェリックはシャリオに視線を向けた。
シャリオは頭を下げたままの姿勢で、体をぴくり震わせた。
「入団し、手当を受け取るようになると、シャリオは病気がちな母親の薬代にと仕送りを始めたのですが、両親の生活を支えるには十分でなく、父親は知り合いの農家で働くようになったのです。そうだな?」
フェリックの問いかけに、シャリオはためらいながら体を起こし、うなずいた。
「はい、我が家が所有していた畑を買い取った農家で、……ミリエッタ公爵の妹の嫁ぎ先でもあります」
「へえ、ここでミリエッタ家が出てくるんだな?」
レオンは確認するようにつぶやいた。
「で、そのミリエッタ家の息がかかった農家は、経済的に苦労している者たちを集め多額の報酬を渡してこの騒ぎを起こさせた、ということか?」
遠からずその通りだろうとラルフは自信ありげに言ったが、シャリオは顔をこわばらせ、曖昧にうなずいた。
「その農家を使ってこの騒ぎを起こさせたのはその通りなのですが、多額の報酬などいっさいありません」
悔しげに顔をゆがませたシャリオに、レオンは眉を寄せた。
「わずかな報酬ということか?」
「いえ、それも間違いでございます。報酬などいっさいございません」
次第に声高になるシャリオの言葉がその場に響いた。