王太子の揺るぎなき独占愛




「報酬がほしければ鉱山を爆破してこいと言われたそうです。そして、爆破をやめさせたければ……」
「ステファノ王子とジュリアの結婚を取りやめることが、爆破中止の条件ということか?」

 興奮しているシャリオの言葉を引き取り、レオンがフェリックに問いかけた。
 フェリックは目に怒りを浮かべ、うなずいた。

「そうか。なんともずるいやり方だな。自分の手は汚さず力のない者につらいことをさせるとは」

 レオンは胸に溢れる怒りをようやくの思いで抑え込んだ。

 まず今は、とらえらえている作業員たちを助け出すことが第一だ。
 そして、爆弾というこれまで目にしたことも手にしたこともないものを持たされ犯罪を犯すことを強要された農民たちも救わなければならない。
 強要されたからといって犯罪に手を染めていいわけではないが、シャリオの話を聞けば同情の余地は十分にある。
 自国でこのようなことが起こればその公爵家を即刻取り潰すのだが、レオンにその権限はない。
 だとすれば、せめてファウル王国の領土内にある作業事務所での犯罪は自国で処理しようと決めた。

「だが、どういうことだ? 報酬をいっさいもらっていないのに、ここまでのことをしでかす必要はあったのか? あとで支払うという言葉も信用できないどころか、下手をすれば爆発で自分の命もぶっ飛んでしまうぞ?」
「それは……」

 レオンの疑問に、シャリオはいっそう激しい怒りをみなぎらせた。

「あいつは……ミリエッタ家のやつらは、家族を人質にとっているのです。村の集会所に家族を集め、そのまま閉じ込めたのです。その中には妊婦もいれば小さな子どももいます。集会所の周りにはミリエッタ家の息がかかった盗賊たちが、それこそ報酬をもらって見張っていて逃げられません。父も、こんなことしたくはなかったはずです。ですが母が人質に取られては従わないわけにはいかず。うまく逃げ出した妹が王城に駆け込んでフェリック団長に直訴し、ことの真相がわかったのです」

 シャリオは地面を何度もたたき、悔しさをぶつけた。


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