王太子の揺るぎなき独占愛
ラスペード王国に帰還する騎士たち総勢五百人は、整然と隊列を組み採掘場がある山の中腹から下山し、麓の村を駆け抜ける。
騎士全員が村を抜けるにはかなりの時間を要するのだが、普段、騎士の隊列を目にすることのない村人たちは、感嘆の声をあげながら、食い入るように眺めている。
騎士たちが騎乗する馬は、毛並みが整いつややかで、顔つきもきりりとしている。
普段農耕馬とともに生活している村人たちは、立派な馬とたくましい騎士の姿に感嘆の声を上げ、手を振る。
誰もが採掘場で起きた立てこもり事件が無事に解決したことに安堵していた。
街道沿いに並ぶ村人たちの中には若い女性も多く、凛々しい騎士たちにときめき顔を赤くしている者もいるが、その中にはレオンの姿を探す女性もいた。
「レオン殿下の姿が見えなかったけど、どうしたのかしら」
隊列が通り過ぎたあと、ひとりの女性がレオンの姿がなかったことに気づいた。
「そうよね。私も探しているんだけど、いらっしゃらなかったわ」
周りにいる女性たちが、こくこくとうなずいた。
「今の隊列はラスペードの騎士たちだったから、もうすぐ、我がファウル王国の騎士たちが来るんじゃない?」
「そうかもしれないわね。レオン殿下は相変わらず騎士服がお似合いで、あのクールは表情で駆け抜けていくのかしら」
顔を赤くし夢見がちにつぶやく女性の周りには、同じように顔を赤くしている女性たちが大勢いて、一斉に「きゃー」と言って飛び上がる。
国内外問わずレオンの人気は高いのだが、最近その人気はますます高まっている。
現国王の退位とレオン王太子の即位が公に知らされ、合わせてレオンの婚約が発表されて以降、いよいよ手が届かなくなったレオンの人気は右肩上がりなのだ。