王太子の揺るぎなき独占愛



「おい、かなり速いぞ。子どもたちは大人と手をつないでろよ」

 大人たちが近くの子どもたちの手を取ったり抱き上げたりしている間にもどんどんその姿は大きくなり、いよいよ騎乗している者の顔が見えるようになった。

「え? あの騎士服は、ファウル王国のものだけど……もしかしたら、採掘場に向かってるのかしら。え? まだ解決していないの?」
「わあ、めちゃくちゃ速くない? あんなに飛ばすなんて、なにか面倒なことでもあったの……あら? 真ん中のグレーの馬に乗ってるのってイザベラ様よ」

 ひとりの女性の大きな声が響き、その場にいた皆が、そちらに目を向けた。

「まあ、本当、イザベラ様が乗ってらっしゃるわ。相変わらず美しいわね」
「そうね。あれだけ美しくて強いなんて、ステキだわあ。あ、来たわよ」

 村人たちが並ぶ街道を、馬に乗った一団がかなりのスピードで通り過ぎていく。

 イザベラが乗っている馬を守るように、前後左右に男性騎士たちが並び、馬を走らせている。

 採掘場がある山への入山口に続くこの道を走っているということは、昨日から今日にかけて騒ぎがあった採掘場に向かっているのだろう。
 すでにファウル王国の騎士五百人が賭けつけているというのに、改めて追加召集されたということか。
 それならどうしてラスペードの騎士たちは帰ったのだろう。

「どうなってるの?」

 砂ぼこりを残して走り去る一団の後ろ姿を見ながら、村人たちは顔を見合わせた。

「ねえ、イザベラ様の背中にしがみついていたのって、もしかしたら……」
「そうよね、私も気がついたわ」
「必死で背中にしがみついていたから顔はよく見えなかったけど、あれは絶対にサヤ様だったわよね」

 その場にいた皆が大きくうなずいた。



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