王太子の揺るぎなき独占愛




「サヤ、着いたわよ。よく頑張ったわね」

 イザベラは手綱を引いて馬を止めると、背中に張りついているサヤを振り返った。
 滅多に馬に乗ることのないサヤは、その速さと振動に恐怖を感じながらひたすらイザベラにしがみついていた。
 そのせいで腕は震え、ようやくの思いで体を起こした。

「まだ走ってるみたい……体が揺れてる」

 サヤは目の前のイザベラに、力なく笑った。

「そうね。それに結構長い距離を走ったから、明日は体中が痛むはずよ」

 イザベラはくすくす笑いながら、慣れた動きで馬から降りた。

 すると、ともにここまで走ってきた男性騎士が、サヤに両手を差しのべた。

「ご自分で降りられないでしょう。どうぞ」

 サヤは目の前に広げられた騎士の腕を戸惑いながら見つめた。
 たしかに馬に乗ることも降りることもひとりではできないが、初めて会った男性に身を預けることに躊躇する。

 すると、イザベラが慌ててその騎士を押しやった。

「あー、だめだめ。そんなことしてレオン殿下にばれたらどうなることか」
「は?」

 押しやられた騎士は顔をしかめた。

 イザベラはさっさとサヤを馬からおろした。

 サヤは長い時間馬に乗っていたせいで足に力が入らず、イザベラの腕に再びしがみついた。



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