王太子の揺るぎなき独占愛
「今、村の人に聞いたけど、レオン殿下は無事だそうよ。村の医師が、嫌がるレオン殿下を無理矢理診察したそうだし、心配いらないわ。駆け付けた騎士たちも、多少の擦り傷や打ち身はあれど、まったく問題はないって。よかったわね」
「あ……よかった……」
サヤは思っていた以上にホッとし、息を吐き出した。
レオンから城に届いた手紙にはすべて解決し、全員無事だと書かれていたが、結局なにが起こり、どう解決されたのかがわからないサヤの不安は完全には消えなかった。
サヤに温泉にくるようにと書かれていたことには驚いたが、すぐにでもレオンの顔が見たかったサヤは、イザベラに馬に乗せてもらってここまで来たのだ。
来たのはいいが、レオンは事後処理に忙しいらしく、まだ会えていない。
駆け付けた五百人の騎士たちは、レオンの警護に三十人ほどが残り、サヤたちと入れ違いに帰還したそうだ。
サヤは早くレオンの顔が見たいと思いながら足湯を楽しんでいた。
周囲を気にしながらそわそわしている様子に、イザベラは苦笑した。
「そんなにレオン殿下に会いたい?」
イザベラはからかうような声で問いかけた。
「レオン殿下って、子どものころからなにも欲しがらないし、望まない子だったの。いずれ王位に就く身だから、自分の感情はいつもフラットにして冷静でいなければならないって思ってたみたい。それはもう、かわいくない子どもだったのよね」
イザベラの言葉を聞いて、サヤは子どものころのレオンに会いたかったなと、笑った。
「それは大人になっても変わらなかったけど、サヤを好きになって、手に入れようと動き出してからは目の色も変わったし、熱い男に大変身」
「大変身……ですか?」
「そうなの、大変身。そうでもしなきゃサヤと結婚なんてできなかったでしょうしね。あと十年、即位を延ばせば確実にレオンとサヤは結婚できなかったでしょう?」
「それは、わかる……かな」
「だからね、それはもうレオンは必死で策を練って、陛下に直談判……あ、これは、私が言うことじゃないか。とりあえず、レオンはサヤを愛してるし、サヤ以外はなにもいらないのよ」
「えっと……」
イザベラが熱心に話す内容に、サヤはどう答えればいいかと、うつむいた。