王太子の揺るぎなき独占愛
ジュリアとはお互いに苦手なものを教え合いながら楽しい時間をすごしてきた。
そしていとこ同士であるイザベラとはサヤが王城に居を移してから親しく言葉を交わすようになった。
せっかく仲良くなれたというのに、三人にはこれまでとは違う生活が待っている。
サヤはしんみりと、うつむいた。
すると、そんなサヤを叱り飛ばすようにイザベラがサヤの背中をポンと叩いた。
「なに落ち込んでるの。あのね、王妃となったら誰に頼ることなく自分の力でレオン殿下を支えなきゃいけないのよ。レオン殿下に困ったことがあればサヤが支えなきゃならないけど、サヤが困ったときには、レオン殿下に助けを求めちゃダメ。だって、彼は国王になるのよ。国民みんなのものだから、サヤが心配をかけたり足をひっぱったらダメなのよ」
「う、うん。わかってる」
こくりとうなずくサヤに、イザベラは懐疑的な目を向けた。
「だったらとりあえず、馬を乗りこなせるようになりなさい」
「え、馬?」
イザベラの言葉に、サヤは驚いた。
まさかここで馬が出て来るとは思わなかった。
子どものころに何度か練習する機会はあったが、自分の乗馬の才能のなさに落ちこむばかりであっさりとやめてしまった。
イザベラは、サヤの戸惑いに構うことなく言葉を続ける。
「馬だけじゃないわ。自分の身は自分で守れるように剣の練習もしなさい。そして、とにかく体力をつけなさい。いつなにが起きようが、体力さえあれば乗り越えられるから」
イザベラは、次々と無理難題を口にする。
今のサヤは馬には乗れないし、剣なんてまともに持ったこともない。
自分の身を守れるほどの力をつけるには、どれほど練習しなければならないんだろうと、気が遠くなった。