王太子の揺るぎなき独占愛
それは決して足湯のせいではなく、サヤがあまりにもかわいすぎるからだ。
「俺はどうしてサヤをここに呼び寄せたんだ……」
サヤの体をひしと抱きしめ、レオンは苦しげにうなった。
事件は解決したとはいえ、麓の村を不安にさせたこともあり各所を回り、経緯の説明をしなければならなかった。
それでも、一刻も早くサヤに会いたくて呼び寄せたのだが、今はそれを後悔している。
村への説明を終えたあと、急いで王城に戻ればよかった……。
そうすれば、ふたりきりの部屋で思う存分サヤを抱くことができたというのに。
レオンは自分の安易な思いつきを後悔した。
「サヤ……」
今すぐここを発てば、まだ明るいうちに王城に戻ることができる。
レオンはサヤの体を離そうとそっと力を入れるが、サヤはイヤイヤをするように首を横に振り、離れようとしない。
「もう少しこのままで……」
「……っ」
ひくひくと泣いているサヤを無理矢理引き離すこともできず、レオンは空を見上げた。
一面に広がる青い空を見ながら、浅い呼吸を繰り返す。
誰に見られようが構わない。
いますぐサヤを押し倒して思う存分愛しあいたいと、暴れる気持ちを必死で落ち着かせる。
サヤとの初めてを、こんなところで迎えたくはない。
サヤだってそれを望んでいるわけがないのだ。
レオンはサヤを抱きしめたまま、心を落ち着かせるようにゆっくりと体を揺らした。
左右にゆっくりと、まるでサヤをあやすように、何度も。
次第に、こうしているだけで今は満足だと自分に言い聞かせられるほどには落ち着きを取り戻した。
サヤの体温を優しい気持ちで感じていると、体を震わせ泣いていたサヤの呼吸も整ってきた。