王太子の揺るぎなき独占愛



「あ、あの、殿下?」

 あまりにも強い視線を向けられて、サヤは戸惑う。
 作業しやすいようにと体にフィットしたシャツと動きやすいズボンを身に着けたレオンの逞しい体が目の前にあり、目のやり場に困ってしまう。
 ケガをしたレオンの治療をするときにキレイな筋肉がついた腕を見たが、そのとき以上にどきどきしている。
 次第に頬も熱くなり、今まで泣きそうになっていたのが嘘のようだ。

 サヤの様子にレオンはくすりと笑い、いっそう近づくと、彼女の顎に手を添え顔を上げさせた。

「泣いているのか?」

 レオンは心配そうに眉を寄せ問いかけると、顎に置いていた手をそっと動かし親指でサヤの目元を拭った。
 その指先の動きはとても柔らかく、サヤを傷つけないように注意しているのがよくわかる。

 傍らのファロンは、強気な普段のレオンとは違うその様子に驚いた。
 王太子の警護を任され、将来有望だとはいっても、まだまだ下っ端のファロンがこれほど王太子の近くにいる機会は少ない。
 何人もいる先輩騎士たちの指示に従い、勉強している状況だともいえる。

 それでも、今目の前で見せられるレオンの様子が普段と違うことはよくわかる。

 現在、ファウル王国と周辺国との関係は良好であり、農産物の収穫も順調で、その収穫高は国民すべてが十分な食料を手に入れることができるほどだ。

 加えて、新たに発見された大量の鉱石のおかげでもともと盛んだった宝石の加工技術も更なる発展を遂げ、他国との貿易も優位に進められるようになった。


< 27 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop