王太子の揺るぎなき独占愛



 一年を通し、多くの草花や果物が育てられているこの森は、王家の森と呼ばれ、王家からの命を受け、筆頭公爵家であるルブラン家が厳重に管理している。
 森を見下ろすように建っているのが、大国ファウル王国の王城だ。
 広大な国土と豊かな資源に恵まれているファウル王国の東端にある王城は、重厚な石造りで、高台にそびえ立っている。
 荘厳な雰囲気を持つ城は、周囲を堀に囲まれ、孤高の城としても知られている。城の北側に広大な王家の森があるが、王族でも許された者しか立ち入ることができない特別な森だ。

 この森では、あらゆる種類の木々や花々、そして薬草が育てられている。
 建国五百年を誇るファウル王国の王族や貴族、そして国民たちの健康を支えてきた薬草の管理は、ルブラン家が代々任されている。
 建国当初より、学者を多く輩出してきたルブラン家は、その功績により王家の森での研究を許され、あわせて動植物の世話と薬草や果実を使っての王族の健康管理を行うようになった。

 そのため、サヤをはじめルブラン家に生まれた女性はみな、王族それぞれの体質や食の好みなどを頭に入れ、体調を崩したときに最も効果が期待される薬草や野菜、果物などを用意できるように育てられるのだ。
 物心がつく頃から王家の森に連れてこられ、広い森の位置関係や生息している動植物についての教育が始められる。


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