【完】そして、それが恋だと知った日。
内緒の合図みたいでくすぐったい。
それがどうしようもなく、好きで。
塾で勉強詰めでも全然嫌じゃなかった。
それに、この約束があったから私は。
今日まで勉強頑張ってこれたんだよ。
『8月7日にある花火大会なんだけど。隣町でもあるらしくて。もしよかったら一緒にいかない?』
同じ学校の人に気付かれないようにって。
配慮してくれた伊澄くんのメールが嬉しくて。
すぐに行くと返事してしまった。
なにかの雑誌で見たことがある。
男の子との付き合いは駆け引きが必要不可欠だって。
メールの返信は少し遅らせる良いって。
実践してみようと思ったけど。
メールばっかり気になって他の事が手につかなくなって。
私には駆け引きとかそんなのまだ早くて。
結局難しい事は考えないことにした。
それに、伊澄くんは返信早いからって引くタイプじゃないし。
優しいから。大丈夫。
そして8月7日。
私たちは駅前で待ち合わせをしていた。
この日に合わせて浴衣を新調して。
今までは青色の浴衣を着ていたけど。
伊澄くんがピンクっぽいって言ってくれたから。
安直だけど、ピンク色の。
朝顔の描かれた浴衣。
帯は紫色で少し大人っぽく見えるように。