【完】そして、それが恋だと知った日。

手を繋いでたことに気がとられてて。
あんまり屋台のほうに意識を向けていなかったけど。
このお店だけはいいなって思ってたから覚えてる。


そろり立ち寄って売り物を物色する。
値段……りんごあめ我慢したら買えるかも。
んーどれがいいかな。



あっ、これ。


伊澄くんっぽい。
他のよりも一段とキラキラして見えたそれを手にとって。
迷わずにくださいと大声で叫んだ。


喜んで、くれるかな。
こんなもので悪いけど。
でも、笑ってくれるといいな。


そう思って、伊澄くんがいる石段の方へとまた駆けていった。





「お待たせ!」


石段の方へ行くと座っている伊澄くんがいた。
私が声をかけると笑って今来たところといって。
隣の石段に座るよう催促してくれた。


「あれ、りんごあめは?」


「りんごあめより、べっこうあめ食べたくなって。」


本当はりんごあめ買うお金がなくなって。
べっこうあめしか買えなかったんだけど。
そんな事言えないし。


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