【完】そして、それが恋だと知った日。
受験
「これから冬休みに入るが受験勉強のラストスパートだ。年が明ければすぐ受験だ。時間が限られた中、伸ばせる科目に重点を置いて勉強しなさい。」
年明け前最後のHRが終わって。
私たちは中学最後の冬休みを迎えようとしていた。
とはいっても受験勉強で忙しくて。
休みという休みは取れそうにもないんだけどね。
「小笠原さん。」
帰りの支度をしていると伊澄くんに呼び止められる。
「どうしたの?」
「今日、あの場所で。」
「うん。」
それだけ言って伊澄くんは先に教室を出ていった。
あのすれ違い以来、学校でも少しずつ話す機会が増えた。
文化祭を6人で回ったおかげか。
多少ふたりで話していても何も言われることはなかった。
少しずつ、少しずつ。
ふたりの距離感も変わりつつある。
ふたりきりの時の名前呼びも定着してきて。
今じゃ言いなおす事もなくお互いの名前を呼ぶことができる。
塾の帰り、遅い時は伊澄くんも一緒に帰ってくれて。
手を繋ぐことに、躊躇することも少なくなってきていて。
この2カ月で、ゆっくりと。
私たちは成長している。