【完】そして、それが恋だと知った日。
伊澄くんの目の中に私がいて。
私の目の中にもきっと、伊澄くんがいる。


ほとんど変わらない身長。
女の子のように華奢な身体つき。
幼い顔つきに、高い声。
無邪気な笑顔。


私の知っている男子と違う。
身近に感じる、男子。


伊澄くん……。


「で、なんか用?」


「そうそう、うちのお父さんが映画の券くれたんだけどさ。
 ちょうど6枚あるんだよね。
 だから、うちと理香子と真子と。
 そっちの3人で行かないかなって思って。」


映画?
初耳なんだけど……。
理香子の方を見ると、同じこと思ってたみたいで目があった。
仕方ないなあって顔してたから。
きっと、ついていくんだろう。


本当は、行きたくない。
男子と出かけたって噂流れたら困るし。
でも、すみれ頑張って誘ってるし。
よく見たら手、震えてるし。
友達だし。


それにグループだったら怪しまれないよね。
たくさんの言い訳を考えて。
行きたくないの言葉を飲み込む。


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