【完】そして、それが恋だと知った日。
校庭は運動会で借り物競走をした記憶が新しい。
そして、伊澄くんとすごした教室。
斜め前の席。
横顔とえりあしが一緒に見えるラッキーな席。
真剣な表情にきゅんとして。
友達と笑い合う姿に胸が締め付けられる。
緑色の黒板に、白色のチョーク。
授業の進むスピードが速くて慌てて番書を写したことを思い出す。
みんなで机を合わせて食べた給食。
温かいご飯とお味噌汁。
嫌いなおかずが出た時はこっそりすみれと理香子にあげたりしたっけ。
デザートが出た時はみんなでじゃんけんして取りあって。
オレンジゼリーが出た時は頑張ったなあ。
文化祭は特にいちばん思い入れがある。
伊澄くんを傷つけた。
伊澄くんを好きだと気づいた。
伊澄くんとの思い出がたくさんつまってる。
そんな、秋の日。
たくさんの思い出が溢れるこの場所は。
明日からはもう私たちの居場所ではなくなる。
3年1組の小笠原真子は。
今日で、さよならなんだ。
「卒業やだよお~」
「すみれ鼻水……。」
教室に戻ってくると、すみれが我慢していた涙を流し始めた。
涙だけじゃなくて鼻水まで垂れてきていて。
理香子が慌ててティッシュをあてていた。