【完】そして、それが恋だと知った日。
全力で走って待ち合わせ場所に向かうと。
待ち合わせの5分前で。
まだ、だれも来ていなかった。
よかった、遅れなくて。
だれもいなくてよかった……。
こんな姿、見られたくないし。


鏡を取り出して、乱れた髪を整える。
結び直しは、しなくてもよさそうかな。
思っていたよりも崩れていなかった髪にほっと息をつく。


リップを塗り直して、バッグをぎゅっと握る。
桜色のリップ、目立たないしよく見ないと塗ってる事も分からないだろうし。
気会い、入れ過ぎてないし。
変に見えないよね……。


さっきまでさんざん悩んで決めた服。
大丈夫だってお母さんからのお墨付きをもらって。
納得して家を出てきたのに。
また悩み始める。
不安は取り除かれない。


待ち合わせの3分前。
こっちに向かって走ってくる男の子を見つけた。
あの身長は、伊澄くんだ。


「小笠原さん!」


「い、伊澄くん。」


「早いね。」


「伊澄くんも。」


暑いねってTシャツをパタパタさせている伊澄くん。
制服の時と、雰囲気違う。



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