【完】そして、それが恋だと知った日。

こんなに遅れてくるなら走らなきゃよかった。
急いできた私バカみたい。
遅れてきたふたりを恨めしく思いつつ。
映画館へと私たちは歩みを進めた。


一番先頭にすみれと高橋くん。
ふたりとも遅れてきたのに。
すみれは遅れてきた高橋くんをからかっていた。
もちろん何も知らない高橋くんは謝ってるけど。
謝る必要ないんだよ……。


でもその姿はどこか楽しそうで。
なんか少しお似合いだと思ってしまった。


その後ろから理香子と伊澄くん。
理香子は彼氏がいるから男子と話すの慣れているんだろう。
他愛もない話をして会話を弾ませようとしているけど。
女子と話すのが慣れていないのか、伊澄くんは。
たどたどしく返事をしている。
ふたり、意外な組み合わせかも。


意外って言ったら、私たちもか。
一番後ろから余った私と苑田くんが並んで歩いた。


苑田くんは他の男子と比べても大きくて。
きっと170は超えてるんじゃないかなってくらい大きい。
150ちょっとの私とじゃ身長差があり過ぎて。
顔を見て話すだけでも首が痛くなる。


それに話したこと一回もないし。
苑田くんもぺらぺら話すタイプじゃないだろうし。
なんか気まずくて、地面を見ながら歩く。


「伊澄ってさ、下の名前なんて言うの?」


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