【完】そして、それが恋だと知った日。

薄暗い映画館で。
他人に話声が聞こえないように。
いつもより近い位置で話しかけられて。
左の耳が熱を帯びる。


耳元にと息がかかってくすぐったい。
それに、なんかいい匂いするし。
ど、ドキドキする……。


顔が見えない暗さでよかったと。
心底思った。


「席順、勝手に決めてごめんね。」


「い、いえ。」


「俺、女子の隣が嫌でなるべく避けたかったんだけど。高橋と長沢さんいい感じだったから一緒にしてあげたくて。でもそのふたりの隣に座るの嫌だったから。小笠原さんに盾役になってもらったんだけど。もし嫌な思いさせてたら、ごめん。」


「全然、大丈夫だよ。」


そういう理由があったんだ。
疑問を覚えていた席順に納得する。
でも、女子嫌なのに何で私……?
理香子でも良かっただろうに。


「井上さん彼氏いるし、変なことに巻き込まれたくなかったんだよね。」


そんな私の心を見透かすかのように。
苑田くんは言葉を付け足した。


消去法で私だったんだ。
疑問に思っていたことが全部消えてすっきりした。


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