【完】そして、それが恋だと知った日。

ただの文字なのに。
たったそれだけでどきっとした。


それから私たちは解散して。
それぞれ家へ向かった。


今日、楽しかったな。
知らなかったこと、いっぱい知れたし。
男子もそんなに悪くないかもって思ったし。


ぼーっと歩いていると。
後ろから名前を呼ぶ声がした。
条件反射で振り向くと。
こっちへ走ってくる伊澄くんの姿が見えた。


え、伊澄くんなんで……。
って、あ、帰る方向一緒だ。
公園で会うくらいだもんね。


「小笠原さん。」


「伊澄くん、どうしたの。」


「見かけたから、一緒に帰ろうかな……って。」


「そっか。うん。
 一緒に帰ろう。」


「うん。」


駅でみんなを待っている時とは違う。
ひと1人分の距離を開けて私たちは歩いた。
き、緊張する。


思わず髪をぎゅっと持ちそうになったけど。
いつもと違う結い方をしているから。



< 32 / 207 >

この作品をシェア

pagetop