【完】そして、それが恋だと知った日。
伊澄くんと文化祭回ったら。
楽しいんだろうなって。
いつもよりお話しできるかなって。
胸を膨らませたりしていた。
この瞬間、私の世界には私と伊澄くんしかいなくて。
他の事なんて、考えられなかった。
ドキドキ、胸がギュってする。
ふわふわ、宙に浮かんでいるような。
足取りがおぼつかない、意識がどこか遠くにあるような。
今なら何でも出来そうな。
そんな気分。
からまる視線が熱くて。
結った髪をきゅっと握りしめる。
勇気を出して、
「はい。」
そう、呟いた。
*
「ただいまより、春中祭を開催します。」
どこか浮き足立つ校舎内。
みんな期待に胸を膨らませ。
よく晴れた秋晴れの10月初句。
春丘中学校文化祭がスタートした。
そんな中私ひとり、重苦しい雰囲気を漂わせていた。
勢いで伊澄くんからのお誘い受け入れちゃったけど。
完全に理香子の事忘れてた……。