【完】そして、それが恋だと知った日。
そう笑った苑田くんは、足早に館内へはいっていった。
止める暇も、なかった……。
結局その場には、私と伊澄くん。
ふたりだけが残った。
ちらり、伊澄くんの方を見ると。
視線を泳がせて、顔を少し赤くさせていた。
しばらくふたりして地面を見て立ちすくんでいると。
「こっち……。」
そう言った伊澄くんが人気の少ない方へ歩いて行った。
言われるがままに進んでいくと。
みんなのいる所とは反対側。
ずっと進んだ所に、小さな小屋を見つけた。
「ここ来た時に見つけて。」
そこは私達以外誰もいなくて。
月あかりがぽうっと辺りを照らしていた。
伊澄くんが座った隣に、ちょこんと腰を下ろす。
緊張する……。
人がいないから、誰かに見られる事もないし安心だけど。
ふたりっきりっていう状況が心拍数を上昇させた。
ああ、何話そう……。
ふたつに結った髪をきゅっと握る。
「あ、のさ。」
ふいに、伊澄くんが口を開いた。
「小笠原さんって高校、どこ行くの?」
「えっと、多分、西校……。」