【完】そして、それが恋だと知った日。
恋ワズライ
些細なことで君を思い出す。
「えー、太陽を公転する天体の中には彗星があり、ハレー彗星やリニア彗星が有名ですが……」
理科の時間、彗星って言葉を聞くだけでどきっとしてしまう。
前の方に座っている伊澄くんを見て。
その後、ノートに書かれた彗星の文字を見て。
それを何度も繰り返してしまう。
出来心でノートの端に、伊澄彗と書いてみたり。
正気になると恥ずかしくなって、殴るように消しゴムで消した。
英語の授業の時は伊澄くん得意なんだから私も頑張らなくちゃって。
そう思って真面目に授業を受けてみたり。
でも結局難しくて、断念したり。
帰り道寄り道した雑貨屋さんで。
小学生が好きそうなチャーム付きの鉛筆だったり。
匂い付きの消しゴムを見つけたら。
伊澄くんの妹さん好きかなって考えちゃったり。
あの宿泊研修の時に知った伊澄くんの情報が。
私の生活にたくさん影響していて。
どこへ行っても、伊澄くんに関連付けてしまう。
前よりもたくさん、伊澄くんのことを考える時間が増えた。
目で追う回数も増えて。
話しかけたい衝動も増えて。
でもはずかしくて。
周りの視線を気にしてしまって。
学校で話しかけることができなくて。
また、意気地無しの自分に自己嫌悪。