恋ができない私たち
「そろそろ帰ろうぜ。」
俺たちの家と千夏の家は、家が近い。というか、隣だ。
「あー…、うん。」
切なそうな表情で、昂輝に近づく。
そんな顔、見せないでくれ。
それに、その顔は俺じゃない違う男に向けられた顔だ。
その顔をどうにか笑顔に変えられないだろうか。千夏は笑顔が一番可愛いのに。
「昂輝、明日は文化祭の準備で、来れない。明後日も、文化祭だから来れないんだ。でも、また来るね。」
「…じゃあ、行くぞ。」
病室を出て、廊下を歩いていたら、千夏が急に、
「…あっ、スマホ忘れた。ちょっと取って来るから待ってて。」
「俺も一緒に行こうか?」
「だ、大丈夫!すぐ取ってくるね!」
「…?分かった」
千夏の言動に少し疑問を持ったけど、廊下にある椅子に座って、待つことにした。