恋ができない私たち
~千夏~
雨
ガラッ
後ろを振り返ると、そこには狼がいた。
「あれ、狼。部活は?」
狼は、私が昂輝の手を握っているのを横目で見ながら、
「今日雨だから休み。あと花持ってきた。」
と、答えた。
雨…、窓の外を見る。忘れていた。
いや、無意識に忘れようとしていたのかもしれない。
中学2年で、昂輝が病気で眠り始めてしまった日も、
中学3年で、もうすぐ死んでしまうと聞いた日も、雨だった。
雨の日は、嫌なことしか起きない。