君のことは一ミリたりとも【完】
「まるで思春期の子供ね」
「え、それ河田さんに言われたくなかったなぁ〜」
「私は思春期じゃない」
「自覚ないとか」
彼はそんな私を嘲笑っていたが、今までどうしてあそこまで酷い態度を取られていたのかは何と無く分かった。
そしてそれにまんまと引っかかり、彼のことを嫌いになってしまった自分が悔しくなる。
「けど、今になって後悔してる。そんな馬鹿なことしなければ今こんなに苦しむことはないだろうなって」
「……そうだね」
「河田さんの人付き合いとか、本当に好きだと思える人にしか一緒にいないところとか、それ以外の人はバッサリ切り捨てるところとか、俺には絶対出来なかったから。だから俺はそんな河田さんのことが羨ましくて……」
「……」
「……妬ましかったんだ」
彼の気持ちの奥深くにあるドロドロとした感情は突然現れたものではなく、これまでの境遇からじわじわと生み出されたものだ。
そんな彼の前に人付き合いが苦手なくせに強気に振る舞う私は、その滑稽さを認めることが出来なかったのだろう。
あんまりにも辛気臭い話をしているからか、周りを通る人たちの目が一瞬だけ気になる。別れ話か?と思われてしまっているのが嫌ほど伝わってくる。きっと唐沢も同様に。
「爺ちゃん婆ちゃんのためにもいい子でいなきゃいけないっていう責任感と、それを背負ってしまってるからこそのストレスの捌け口が必要で、河田さんに当たってると馬鹿みたいにスッキリ出来て」
「最低ね」
「本当にね」