君のことは一ミリたりとも【完】
何だっけ?と惚ける彼に私は呆れたように溜息をつく。
「結局、アンタは私とどうなりたいわけ。付き合いたいの? 告白なかったことにして欲しいの?」
「えー、今の話聞いてて分からなかったの?」
「前振りが長すぎて話がまとまってないから」
「結構俺、自分のこと晒け出したんですけど」
ジッと彼の顔を凝視しているとその視線に彼もいたたまれなくなったのか、一瞬たじろぐ仕草を見せ、そして「うん、まぁ……」と、
「そりゃあ……付き合いたい……ですけど……」
けど好感度最低だしなぁ、と諦めたように言葉を漏らした彼はモゴモゴとした口振りで胸の前で腕を組む。
その不安の表れが体前面に出てしまっているところ、やはり彼は口はどれだけ上手いことを言えても身体までは制御しきれないのだろう。新田さんの言っていた通りだ。
『俺はお前に気にしてほしいのかもしれない』
もう誰にも、誰にも心を許したくない。
もう誰にも、誰にも裏切られたくない。
好きという感情さえ、なくなってしまえばいいと思っていた。
「……いいの?」
「へ?」
「……」
気が抜けたような声を漏らす彼に「やはり焦った時は素が出るな」と新田さんの言葉に深く頷いた。