君のことは一ミリたりとも【完】
インターホンを押すと暫くして「はぁい!」という明るい声で聞こえる。声からして気分が良いことが分かると声が聞こえて数秒後に玄関の扉が開かれた。
「亜紀ちゃんいらっしゃーい! ようこそ我が家へ!」
「ようこそって、前にも来たことあるじゃん」
「じゃあ新生我が家へようこそ」
優麻は「久しぶりー!」と私に嬉しそうに抱き付いてくる。人懐っこいところは高校の頃と一つも変わらない。
ここ最近私の仕事が忙しいことや、彼女の出産と退院などが重なってなかなか顔を合わせることがなかった。そんな時、家でパーティーを開くからという理由でこの神崎家へ招待されたのだった。
「そんなに動いて大丈夫なの? 退院したばかりなんでしょ?」
「大丈夫だよー、先生からもお墨付き」
派手に動き回る彼女を心配する。無事出産できたことは電話で聞いていたのだが、やはり直接会って話さないと不安だったのは確かだ。
でも本当に元気そうで良かった。それだけでも今日来たことに意味はある。
姫乃もさっき起きたばっかりでタイミングいいねー、と赤ちゃんの名前を出した彼女。
初めて生で見る彼女の子供に密かに胸を踊らし、リビングへの扉に手をかける。
その時、
「やっぱり目のところは優麻ちゃん似だねー。聖と優麻ちゃんのいいとこ取りって感じ」
「別に全部優麻に似て良かったんだけどね」
「それ、反対のこと優麻ちゃんも言ってたよ」
なんか、リビングから聞き覚えのある声が聞こえるんですが。