君のことは一ミリたりとも【完】
そうこうしている間に食事の準備が出来たのか、私たちの名前を優麻が呼ぶ。
行こうかと先にテーブルへと向かった彼の背中を眺めながら、いつの日か言われたことを思い出す。
「(そういえば唐沢の親が離婚した理由って何だっけ……)」
その先までは聞いてなかったな。
食事は主に優麻と唐沢が中心になって行われた。優麻が率先して話題を振り、それを唐沢が広げていく。たまに優麻に質問を投げかけられ私が答え、神崎もその様子を遠巻きから楽しそうに見守っていた。
なんかこの感じ懐かしいな。そういえば高校の頃はよくこの四人で昼食を共にしていた。優麻と神崎の二人じゃ私が一人になるから、そんな二人の気遣いで私も仲間に入れてもらい、唐沢も「河田さんがいるなら俺もいいでしょ」と流れで加わった。
いつも優麻と唐沢が楽しそうに話し、たまに私と唐沢が意見の食い違いで喧嘩が勃発しそうになったり、それを優麻が宥め隣の神崎に助けを求める。そういうパターンが多かったかも。
「でもまたこの四人でご飯食べれて嬉しいかも。またしようよ、ウチなら全然いいし」
「まぁ、俺と河田さんが結婚するまでは大丈夫かもねぇ」
結婚、というワードにミーハーな優麻が喰いつかない訳がなかった。
「え、爽太くん結婚相手いるの?! ていうか今お付き合いしてる人は!?」
「あー、最近出来たよ。新しい彼女」
「嘘! どんな子!?」
コイツ、余計なことは言うなってあれだけ釘を刺しておいたはずだったのに。
隣に座る唐沢の脚をテーブルの下で強く踏むと「あいたっ!」と表情が歪む。