君のことは一ミリたりとも【完】
「どうしたの?」
「いやぁ、ちょっと脚がね」
「脚?」
「彼女は恥ずかしがり屋だからまた今度紹介してあげるよ」
そんないい加減なことばかりを言いふらす唐沢。ガムテープか何かで縛らないと本当に全部を話してしまいそうな勢いだ。
そしてそれに慌てている私を見て面白がっている。なんて性格が悪い奴なんだ。
ていうか本当にどうするの、私。もしこのまま唐沢と付き合い続けたとして、いつかは優麻に言わなければいけない。
するとここに行き着くまでのアレやコレやも話さなければいけないだろう。酷く面倒だ。
それに、
「爽太に彼女できるの久しぶりじゃない?」
そう口を開いたのはずっと黙って話を聞いていた神崎だった。
「ここ二年くらい居なかったよね」
「んー、どうだろ。いなかったといえばいなかった?」
「どっちなの爽太くん」
「いなかった、かなぁ。仕事が忙しくなってからプライベートが疎かだったしね」
なんか意外。口を挟むと関係を疑われそうなので興味がなさそうなフリをしながら会話を聞いていた。
けどまぁ確かに、高校の時は知らない間に彼女が入れ替わってるんじゃないかってくらい付き合ったり別れてたりしてたような気もする。あの時の茶髪のセミロングの彼女もいつのまにか隣にいなくなっていた。
そうか、この男は気持ちが長続きしないのか。