君のことは一ミリたりとも【完】
優麻の出産、退院祝いのパーティーは彼女の体に負担をかけぬよう、早めの6時に御開きとなった。
私を玄関まで見送りに来た彼女が申し訳なさそうに手を振る。
「ごめんねー、次は是非泊まりに来て」
「駄目だよ、家族水入らずなのに迷惑じゃん」
「そんなことないって! 亜紀ちゃんなら大歓迎だから!」
そう声を張り上げた彼女に「愛されてるなー」と実感する。
と、
「じゃあ俺も泊めてもらっちゃおう〜」
急に右肩が重くなったと思ったら唐沢が私の方に肘をついて体重をかけてきていた。
もっと普通に登場できないのか、と勢いよく振り払うと彼が「うわっ」と肩から振り落とされる。
「いいけど聖くんと一緒のベッドに寝てね」
「え゛、聖とか。それは残念」
何が残念なのかと呆れたように見ていると彼が下靴を履いているのが目に入った。
「え、まさか一緒に帰るつもり?」
「折角だし駅まで送ってあげるよ」
「別にいらない、一人で帰るから」
「まぁまぁまぁ」