君のことは一ミリたりとも【完】
「……き」
「なあに? 小さすぎて聞こえなかったー」
「っ……性格悪すぎ」
「ははっ、もっかい言って?」
「……」
いつもの私ならきっと拗ねて彼のことを突き飛ばしているだろう。
でももう私はこの気持ちを口に出さずにはいられなかった。
「好き、アンタが好きって言って」
その続きを言う前に私は彼のキスによって唇を塞がれる。
目を瞑り彼のキスを受け止めると今あったことが足元から全て浄化されていくような気がした。
唇を離すと唐沢は今までで一番に慈愛に満ちた顔で私のことを見つめた。
「俺も好き」
この男が好きだ。その心に偽りはなかった。