君のことは一ミリたりとも【完】
照れ臭いのか目を逸らしながらそう口にする彼女から反対に目が離せなくなっていた。
「うん、約束したしね」
「流石に冗談かと思った」
「まさか、約束したことは守る主義だよ、俺」
「……でも今度からは連絡して。次やったら怒るから」
それは怖い。生瀬同様、「心に誓うよ」と返事をする。
それでも何かを言い足りないようで口元をモゴモゴと動かす亜紀さんに、「あぁ、この子のこと好きだな」と今までにない感情が湧き立つ。
真っ直ぐすぎて、向かってくるものを全部受け止めてしまうから直ぐにボロボロになる。
だけどその真っ直ぐさと真の強さ、そして意外とか弱いところに確かに惹かれていた。
この子はきっと俺がいなくても一人でやっていける。
そんな子を自分で駄目にしたいなんて、最低な人間なのかもしれない。
それでも、
「亜紀さん、俺のこと好き?」
「っ……」
昨日と同じ質問をすれば合わなかった視線がこちらに向けられた。
彼女はもう一度深く考え、そして慎重に言葉を吐き出す。
「正直、昨日は勢いもあったと思う。混乱していたし」
「だろうね」
「アンタに対せる気持ちがそういう感情なのかも、本当のところはハッキリしてない」
曖昧に濁されたり、嘘を言われるよりかはマシだと思われた言葉だが、それでも一人ぬか喜びしてしまったなという脱力感に見舞われる。