君のことは一ミリたりとも【完】
しかし彼女の次の言葉を聞いた瞬間、俺の心は晴れやかなものになった。
「でも、きっとそうよ。アンタに対する気持ちは。きっと」
「きっと?」
「……きっと、恋愛感情だと思う」
その言葉を聞いて、「俺も誰かに必要とされたかったんだ」と気が付いた。
だけどその手を取れなかったのは人に裏切られることの絶望感を知ってしまっているからだった。
それでも彼女の手だけは取りたいと思った。
「俺も昔からそうだと思った」
「どういう意味?」
「昔から、亜紀さんのこと意識してた」
今だから思う、どうしてあんなにも彼女に対してだけはキツく当たっていたのか。
惹かれているのを認められない自分がいたからだ。自分と正反対の人だから自然の目で追って、気持ちも追いかけていた自分がいたんだ。
当時思春期真っ盛りな俺はまさか自分と正反対の女の子を好きになるなんて思ってもなくて、何かの間違いだと思いたくて、必死に彼女に対する負の感情で自分を埋め尽くさないと自分が自分で無くなってしまうようで怖かった。
ストレスのはけ口という都合のいい存在にしてしまったことを俺は一生悔いるだろうな。
「俺も好きだよ、大好きだ」
「っ……」
この言葉を言うのに、実に10年も遠回りしてしまった。