君のことは一ミリたりとも【完】




その"きっと"が確かになるまで、もう少しだけ頑張らせてもらってもいいかな?


「亜紀さん、意外とこういうストレートなのに弱いよね」

「五月蝿い……」


赤くなった顔を隠すように腕を前に出した彼女にクスリと微笑むと、「じゃあね」とその頭を軽く撫で、新幹線のホームへと向かった。
先程までの生瀬に対する黒い感情はすっかりと晴れてしまっていた。もう一度人を信じてみてもいいかもしれない。

そうしたら昔の俺も、今の俺を見て勇気付けられるだろう。

予定していた新幹線に乗り込むと中断していた仕事を再開するようにPCを開く。
キーボードに触れると亜紀さんの顔が頭に浮かんだ。


『でも、きっとそうよ。アンタに対する気持ちは。きっと』

『きっと?』

『……きっと、恋愛感情だと思う』


好きな子から告白されるって、こんなに嬉しいものだったのか。
というか、俺って今まで本当に好きな子と付き合ったことってあったっけ?


「(そりゃ、年甲斐もなくはしゃいじゃうわけだわ)」


漏れる溜息は幸せすぎて息継ぎが足りないからだ。





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