君のことは一ミリたりとも【完】



【先輩、いつ会社来るんですか! お昼からなんて聞いてません!】


駅前のロータリーに留めていた車に乗り込むと勢いよくなったスマホに加奈ちゃんからのメッセージが映し出される。
そういえば竹村には相談していたけど加奈ちゃんには結局何も言ってなかったな。

あの時、加奈ちゃんの一言で新幹線のチケットを購入した俺はそのことを思い出し、改めて彼女には何かお礼をしなければならないと思った。
俺、本当に加奈ちゃんに助けられてばっかりだな。亜紀さんと付き合えたもの加奈ちゃんのお陰だし。


「(お土産、多めに渡すか)」


喜ぶ顔を浮かべながら車のエンジンを掛ける。

と、


「すみません」


篭った声が聞こえたと思い目を向けると窓の外に30歳くらいになる女性が経っていた。
何だ、と窓を開くと顔を外に出す。


「はい」

「こんにちは。私こういうものです」

「は?」


本当に何だいきなり。そう手渡された小さな紙切れに目を通すと業界の中でも有名なゴシップ誌の名前が書かれてあった。
なんか俺週刊誌に書かれるようなことしたっけ。全然記憶にないな。


「今少しお話しいいですか?」

「……すみません、仕事に行かなくちゃ駄目なので」



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