君のことは一ミリたりとも【完】
確かに寝室に置かれていたベッドは二人が横になっても大丈夫な広さだとは言えるが、まだ付き合ってそう時も立ってないこの状況でベッドインするのはどうかと思う。
「というか今更じゃない? 俺たちもう二回も同じベッドで夜を明かしてるのに」
「誤解するようなことを言うな!」
「いや、事実じゃん」
唐沢の言ってることは事実だし、少なくとも彼と同じベッドで寝ること自体には抵抗はない。ただ私が恥ずかしがってるだけなのだ。
しかしこのままだと拉致が明かないし、結果唐沢がソファーで寝るとは言い出しそうなのでここは私が折れるしかないのだろう。
疲れたからもう寝る、とベッドに入った私に対し、その側で膝を突き横になる私を見つめてくる唐沢。
「なに、寝ないの?」
「まだお風呂入ってないから。なんか亜紀さんが家にいるって変な感じ」
「……」
私もこの男と恋人のようなことをしていることに対して不思議な感じはするが。
「……明日」
「ん?」
「夕御飯、私が作るから。流石にこの間の焼きそばが手料理ってわけにもいかないし」
「はは、気にしてたんだ。それ」
亜紀さんらしいなぁと手を伸ばした彼はゆっくりと私の頭を優しく撫でる。
「おやすみ」
「……」