君のことは一ミリたりとも【完】



だけど亜紀さんと出会えて、俺はようやく自分のことを少しだけ分かった気がするんだ。

そろそろ約束の場所へ移動しよう。そう思った時だった。


"彼"から連絡が来たのは。





翌日。


《昨日、週刊誌『朝日スクープ』の編集長が女子高校生への猥褻行為で逮捕されました》


世間ではこんなニュースが出回り、出版業界は大荒れだった。
今朝、仕事場に来てもテレビから同じニュースが流れていたので画面を凝視していると缶コーヒー片手に隣に並んだ竹村が口を開く。


「ここ、水平社のとこだよな。結構大きなスクープ記事連発してる」

「メディアに取り上げられるのも多いから一般的にも有名なね」

「うーわ、因果応報ってやつ? でも週刊誌も廃刊になるもんなんだな」

「……」


編集長の男が逮捕されたのを受けて、今朝ゴシップ記事を扱っていた『朝日スクープ』は廃刊になることが決まった。
確かに竹村の言う通り、編集長が逮捕されてからの廃刊が決まるまでの時間はごく僅か。明らかにこの間に大きな圧力が掛かっていることが分かる。


「うち、正当な記事扱う経済雑誌で良かったね」

「地味だけどな。でもこんな大事になるよりマシだろ」



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