君のことは一ミリたりとも【完】



すると大きな音を立てて編集部に入ってきた加奈ちゃんはその勢いのままテレビの前に突っ立っている俺たちに近付いてきた。


「女の敵です! 許せません!」

「加奈ちゃんおはよう。女の敵って?」

「おはようございます! この編集長ですよ! 芸能界に憧れる若い女の子は沢山いるのにそこに漬け込んでホテルでえっちなことをしようだなんて!」


絶対に許せないです!と鼻息荒く怒り狂っている彼女のことを二人して宥める。


「爽太先輩はそう思いませんか?」

「うん、女の敵だと思う」

「ですよね!」

「出来れば死んで詫びてほしい」

「そ、そこまで言ってないんですけど」


そうなの?と尋ねると彼女はやっと落ち着いたのか「そうですよ」と肩を落とす。
でもこういう事件があると関係のない俺たちまで悪の対象に見られがちになるのは確かに困る。

最終的に竹村の「俺たちは真摯な態度で仕事しような」の一言でその場は解散となった。





今日は月末の金曜日ということもあってか定時に近付くにつれ、社員たちの浮きだった心が伝わってくる。
時計の針がジャスト6時を示したところで加奈ちゃんが誰よりも明るい声と共に立ち上がった。


「わー! 今週の仕事終わり!」


今週は特に厳しい締め切りもない為、久しぶりに余裕を持って仕事を終わらすことができた。


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