君のことは一ミリたりとも【完】
え?と彼女の言葉に首を傾げ目線を上げると、ニュース番組に流れていたのは例の週刊誌の事件だった。
そういえば車のラジオで編集長と同じく事件に関与していた男が逮捕されたというニュースが流れ込んできたことを思い出す。
「この男、私知ってる。前に私の玄関にいた」
テレビに映った黒いパーカーを着た男。亜紀さんの家にまでやってきた週刊誌の男はこいつのことだったのか。
「亜紀さん……」
「亜紀さんのアンタ、最近ずっと何か考え事してるようだったし、私に内緒で抱え込んでることも知ってた。でも……」
「……」
「でも、こんなことって……」
あぁ、亜紀さんは気付いてしまったんだ。自分と生瀬のことが週刊誌にリークされそうになったことも。そのことで俺が脅されていたことも。
亜紀さんのことを守ろうとして奮闘していたことも。
彼女の声が震えていることに気付き、頑なに顔を見せてくれない背中に向かって呟く。
「亜紀さん、泣いてるの?」
「っ……」
すると勢いよく振り返った彼女の目元から水滴が飛び散った。
そして、
「馬鹿じゃないの!?」
「……」